本稿は谷崎潤一郎と翻訳との関わりについて論じたものである。谷崎は西洋文学の翻訳、日本の古典の現代語訳に携わった。また、近代日本の口語文を西洋...
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2009
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830
KCI등재
학술저널
195-216(22쪽)
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本稿は谷崎潤一郎と翻訳との関わりについて論じたものである。谷崎は西洋文学の翻訳、日本の古典の現代語訳に携わった。また、近代日本の口語文を西洋...
本稿は谷崎潤一郎と翻訳との関わりについて論じたものである。谷崎は西洋文学の翻訳、日本の古典の現代語訳に携わった。また、近代日本の口語文を西洋語の「翻訳文体」を抜けきられていないものと捉え、「翻訳文体」で書く口語文において日本語の多様な特長を生かすべきだと説いた。
しかしながら、西洋文学を日本語に訳する際には自ら直訳調の「翻訳文体」を用いて、原作の趣きと語法を訳文に取り入れている。日本の古典を現代語に置き換える同一言語内の翻訳においても、現代語に古典文の調子を生かす方法で新たな口語文を作り上げている。ここには「国語」の誕生による近代日本語の均質化を乗り越えようとする作家の意志も窺える。その一方、谷崎にとって翻訳というものは文体の革新のための実践だけではなく、「日本語」を見出す経路であった。西洋語と日本語の差異に注目し、西洋語という言語に対する日本語の固有性という観念を強めて、西洋語を他者とする日本語の近代的主体を生み出したのである。
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