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      『源氏物語』の虚構

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      다국어 초록 (Multilingual Abstract)

      物語文學とは何か、という課題は多様な観点から考えなければならないが、その物語内容について最も重要な特徴としては、次のように考えられる。物語とは、あくまでも人間世界の、...

      物語文學とは何か、という課題は多様な観点から考えなければならないが、その物語内容について最も重要な特徴としては、次のように考えられる。物語とは、あくまでも人間世界の、しかも世にもめずらしい内容の話である。 これには一見するかぎり、一種の矛盾も含まれている、とみられかねない。なぜなら、「世にもめずらしい」話だけならば説話や神話の非現実·超現実なものにも考えられるが、しかしそれがあくまでも「人間世界」の現実的な話でなければならない、と規定されているからである。この二つの要素の結びつきは、綱渡りのような微妙な関係にある。これは、どこにでもあるような事実ではない。物語の内容は、世の中の事実であるよりも、作者によって作られた話、すなわち虚構であるとみる方が、考えやすい。それが、物語文學の普遍性である。物語のなかの特殊性が、虚構のしくみによって、人の世の普遍性を導き出すことになる、といってもよい。 光源氏をはじめとしてこの物語の多くの作中人物たちは、現実世界ではほとんど経験しそうもない極限的な状況を生かされている。じつはそのことを通して、人間の普遍的な形姿が典型的に現れているとみられるのである。これが、物語における虚構と真実の関係をさしている。 今回の報告では、光源氏の特殊な人物造型のほかにも、六条御息所の物の怪事件、さらに暴風雨の須磨の地で源氏が亡き父桐壺院の霊にふれあうという、いずれも物語らしいものめずらしさについても、考えてみた。

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