志賀直哉の『和解』(1917.10)は、長年父親と不和對立を續けてきた主人公がついには父と「和解」を遂げ、當事者たちはもちろん、家族共共安心し喜ぶという內容である。一見父と子の問...
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志賀直哉の『和解』(1917.10)は、長年父親と不和對立を續けてきた主人公がついには父と「和解」を遂げ、當事者たちはもちろん、家族共共安心し喜ぶという內容である。一見父と子の問...
志賀直哉の『和解』(1917.10)は、長年父親と不和對立を續けてきた主人公がついには父と「和解」を遂げ、當事者たちはもちろん、家族共共安心し喜ぶという內容である。一見父と子の問題だけを取り上げているように見えるこの作品は、實はその基底に芸術家としての自立という問題を內包している。本稿では、この点に焦点を合わせて考察を深めてみた。
『和解』の構成はこれまで多くの硏究がなされて、主に構成のあり方に對する疑問と肯定という見方に分れている。その構成は非常に複雜で、作品の讀解にある混亂を生じやすいが、まず本稿ではその原因を主人公父子の變貌の過程を描くため必要な措置であると把握した。また不和から和解にいたるまでの父と子の變貌の過程と和解を可能にさせた諸要因を檢討した結果、その背後には親としての主人公の自覺と作家としてのあり方、つまり自立という別の意味が含まれているとみた。
さらに、主人公の內面において和解の完成した時期を確かめ、和解のもつ眞の意味を檢討してみた結果、親なる自覺にともなる主人公の作家としての自立は、以後誕生する作品如何によってその成功如何が決まると考察した。
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