宇治十帖の方途－薫の道心と恋の構造 = The Measures of Ujijyujyo — The Structure of Kaoru's Love and Intention to Practice Buddhist Doctrines

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本稿では､第三部の物語のはじめの部分といえる「匂宮三帖」における薫の道心と恋のあり方について考察した。第三部の最初の巻「匂兵部卿」には、薫が初めて登場し、彼の道心の由来が述べられている。「匂兵部卿」巻の表現構造では、光源氏と薫を比較対照しつつ、薫のみではなくその道心をも相対化している語りの構造が見られる。薫の道心は彼の幼い時に聞いた自らの出生に関する疑惑に根ざしている。薫は自分の実父が柏木であることを知っているが、以後の物語において、柏木の罪が薫の内面において深く問い直されることはなく、薫の出生の秘密が外化する方向にも物語は展開しない。薫における柏木の「罪」の行方は、第三部の三番目の巻「竹河」と「匂兵部卿」巻との比較を通じて明らかになる。竹河巻は、匂兵部卿巻に語られていたことを「ひが事」と否定することにより、薫の出生の秘事を表面上払拭し、薫の恋における姿を語り出すことができたと考えられる。また、竹河巻では、表面上は薫の秘事について語らない形式を取りつつも、語りや表現のレベルにおいて薫における柏木の「影」を暗示していく〈物語の方法〉が用いられており、こうした〈語りの方法〉は「宇治十帖」において一貫して見られている。竹河巻は、まさしく「宇治十帖」の序として、主人公薫の生のあり方、薫をめぐる語りの方法を象徴的に示している巻であると思われる。

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In 「Niobyeongbukyeong」 which is the first volume of 『Genji Monogatari』 composed of three parts, the main character, Kaoru appears for the first time, and the origin of his Buddhist doctrines is described. In the analysis on the representation structure of the relevant volume, it takes the structure of katari that relativizes not only Kaoru, but also his Buddhist doctrines by comparing and contrasting Hikaru Genji and Kaoru. Kaoru’s Buddhist doctrines is rooted in his doubt about his own birth that was told in his childhood. Even though Kaoru knows that his real father is Kashiwagi, the following monogatari does not describe the scenes in which Kaoru agonizes over Kashiwagi’s sin, and does not even reveal the secret of Kaoru’s birth. The monogatari in the third part does not show the method to explore the meanings of < sin > in the character’s inner side just as the second part. The third volume 「Takegawa」 of the third part is very remarkable in the aspect of issues like gatari and character set-up. The volume 「Takegawa」 denies what has been told in the volume 「Niobyeongbugyeong」 as a 「wrong story」, which is to superficially dispel the secret of Kaoru’s birth, and also to start talking about Kaoru’s look of love.

참고문헌 (Reference)

1 今井上, "踏み惑う薫と夢浮橋―宇治十帖の結末についての試論" 中古文学会 68 : 2001

2 福嶋昭治, "講座 源氏物語の研究 7" 有斐閣 1982

3 三枝秀彰, "薫試論―その主題的に内実とするもの" 中古文学会 35 : 1985

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5 吉岡曠, "源氏物語論" 笠間書院 1972

6 伊藤博, "源氏物語の基底と創造" 武蔵野書院 1994

7 伊藤博, "源氏物語の基底と創造" 武蔵野書院 1994

8 森一郎, "源氏物語の主題と方法" 桜楓社 1979

9 石井一良, "源氏物語と平安文学 3" 早稲田大学出版会 1988

10 阿部秋生, "源氏物語④~⑤(｢新編日本古典文学全集｣23~24" 小学館 1996

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14 木船重昭, "宇治への道―その開鑿の方法と世界" 日本文学協会 24 (24): 1975

15 小町谷照彦, "別冊国文学 源氏物語必携 II" 学燈社 1982